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ITUYOGA

特定の流派には属さないハートオブヨガという理念を持ったヨガの先生。

自分を幸せにすることを許せば、もっと楽に生きられる【幸せ肯定論】

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 ―――第一印象は黒だった。

2016年の年の瀬。年末セールの文字があちこちに見られる。家電量販店ではSIMフリーの販売に勤しむスタッフが所狭しで接客をしている。仕事をきっちり終わらせて2017年を迎えようという勢いがあるように思えた。

「このSIMフリーのキャンペーンではiPhone5sが実質0円でもらえます」

そんなセールストークにちょっと揺らぐ物欲。大衆に人気のiPhone端末の魅力は、シンプルなデザインと高性能なカメラや処理能力に加えて専用のカバーケースが多く販売されているところだろう。

普通に買えば平均的なスマートフォン端末の2倍以上の値段がするiPhoneだからこそ、無料という響きには大きく揺さぶられる。残念なことに、友達との約束の時間が近づいてきてSIMフリーのキャンペーンスタッフから離れることにした。

「ついたー!何階?全身黒づくめですよー!」

そんなメッセージがLINEに届いた。僕は店を出て、お目当ての相手を探して見渡した。黒いコート、黒いストール、銀色のヘッドホンを身につけた黒づくめな友人がそこにいた。

 

「キミは自分を幸せにさせることを許してあげて」

馬刺しが美味しいと噂の居酒屋で友人3人で呑む約束だった。最後の1人が仕事で遅れてやってくるとのことで、先に集まった2人で食事を始めた。最初は烏龍茶を頼み、馬刺しの盛り合わせや桜肉のカレーをつまんだ。

タバコをふかしている友人に、僕はそんなことを伝えた。自分のことを追い込む人は、「私は不幸になるべきだ」みたいに責任を自分に覆い被せてしまうクセを持っている。僕はそれが好きではない。

傲慢かもしれないけど、友人には幸せであってほしいのが友人としての願いだ。

「すみませーん。梅酒のソーダ割りください」

注文をすると、友人に向き合って「自分を幸せにすることをもっと許して欲しい」とお願いをした。呼び慣れたあだ名ではなく、本名で友人を呼び、自分にできる最も真摯な目線で語った。

マジメなことを喋ったなと笑い、僕は梅酒をあおった。

 

 

「幸せかよ」

遅れてやってきた3人目が揃い、改めて「2016年お疲れ様」という乾杯をする。先ほど頼んだ梅酒ソーダ割りだけでぐでんぐでんに酔っ払っている僕は、このあたりから記憶にモヤがかかっている。

代謝の良さに加えて、生まれついてのアルコール耐性の低さが災いしてアルコール度数の低い飲み物をコップの半分飲んだあたりでフラフラしてくる。幼い頃は酒粕で作った奈良漬を食べただけで、顔が赤くなっていたと3年前に亡くなった祖母は笑って教えてくれた。

率直に言えば、この店の酒は美味しかった。恥ずかしい話だが、生まれて初めて日本酒は旨いものだと知った。友人はその美味しさに興奮して、馬刺しをつまんだ。ため息。タバコに火をつけてつぶやく、「最高かよ」と。

酒の精霊の力によって僕は軽い酩酊の状態異常をかけられていた。記憶は曖昧で友人がなにを語っていたのかをあまり覚えていないが、何度も口にした言葉は酒の精霊の力を打ち破って大脳に刻まれた。

「こんなおいしい料理とお酒、タバコもあって、お店の人はやさしいし、幸せかよ」

こんなニュアンスのことを語っていた。僕は嬉しい気持ちで聞いていた。返事はフラフラしながら「ねー」というだけだったが、同じ気持ちを共有していた。人は、周りの環境が整えば幸せを味わうことができる。

あとは自分に幸せを与えることを許すだけだ。「こんな幸せは私に似合わない」といって幸せを拒絶する体質の人もいるが、できることなら自分に幸せを許して欲しい。そう願って梅酒ソーダを最後まで飲み干した。

 

 


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