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特定の流派には属さないハートオブヨガという理念を持ったヨガの先生。

ヨーガスートラの編纂者パタンジャリに関する豆知識まとめ

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ヨーガ哲学の開祖にして、ラージャヨーガの経典『ヨーガスートラ』を編纂したパタンジャリ。多くの謎に包まれていて、伝説上の人物なのか実在したかも不明瞭。しかし、ヨーガの専門書を紐解いていくと、興味深い事実が浮き彫りになってきた。 

 

 

パタンジャリとは

紀元前300年~紀元後400年頃(または紀元前4000年~紀元後600年)に存在したとされるヨーガ哲学の始祖。伝説上の人物であり、実在した人物。なぜそんなに幅の広い時代になっているのかを詳しく説明する。

 

パタンジャリの成した3つの偉業

  • ヨーガ哲学の経典『ヨーガスートラ』編纂者
  • サンスクリット文法書の注釈書『マハーバーシャ』の作者
  • アーユルベーダの主要教典『チャラカ・サンヒター』の関係者

心を明晰にするヨーガの指導を行い、言葉を正しく使えるように文法を指導し、体が健康になるように医学の指導も行いました。

 

パタンジャリは長生き?それとも複数人いた?

これら3冊の本は全ては別々の時代に書かれてます。

  • ヨーガスートラ発祥が紀元3世紀頃(という説が有力)
  • ヨーガスートラの4章が書かれたのが540年頃
  • ヨーガスートラの2章28節~3章55節は古くから存在する
  • サンスクリット語文法書の『マハーバーシャ』が紀元前3世紀

『ヨーガスートラ』の発祥から完成までの年代はおおよそ紀元3~6世紀ではないかと推測されます。『マハーバーシャ』や『チャラカ・サンヒター』の成立年代と『ヨーガスートラ』には600年のズレがあります。

 

文法研究者パタンジャリ≒アーユルベーダ医学者パタンジャリ≠ヨーガ哲学者パタンジャリ

 

①文法研究者・医学者のパタンジャリとヨーガ哲学者のパタンジャリがいた

現実的に考えれば第二・第三のパタンジャリがヨーガスートラを編纂したと考えるのが妥当です。たまたま同姓同名だったか、あるいは意図して同じ名前をつけたは謎です。文法研究者のパタンジャリ、アーユルベーダ医学者のパタンジャリ、ヨーガ哲学者のパタンジャリの3人が存在したという考え。

②長生きしちゃった?

めちゃくちゃ長生きしている説。最も現実味はないが、ロマンはある。神の世界から降りてきて、知恵をさずける神人ないし仙人。無限の蛇として神話に登場する人物という線。

西洋では別々のパタンジャリが存在したと考えますが、伝統的には同一人物だと考えられえています。ヨーガはこういった伝統的な文脈の中で理解されるものだからです。ヨーガスートラを学ぶときは敬意を込めて伝統的な見解から学んでいます。

 

紀元前4000年頃に生きたとされるパタンジャリの説

紀元前4000年頃から活躍したという説があります。紀元前3000年頃に存在したとされるヴェーダの分割者ヴェーダ・ヴィヤーサは『マハーバーラタ』の作者。『マハーバーラタ』の題材となっているクルクシェートラの戦いは紀元前3000年頃の話。そしてヴィヤーサはヨーガスートラの注釈者でもあります。

『マハーバーラタ』の中に八支則のヨーガが言及されており、パタンジャリは紀元前4000年頃の人と考えられたりもします。これが本当なら、ヨーガ哲学の発祥時期が数千年単位で狂ってしまいます。

 

紀元前500年頃まで生きていたという説

ある文献ではヴィヤーサは『ヨーガ・バーシャ』『ブラフマ・スートラ』『バガヴァッド・ギーター』の書いた人物でもあり、紀元前450年頃に生きていたことになります。そこからパタンジャリは紀元前500年頃まで生きたのではと推測がされます。

別の文献では『マハーバーラタ』および『バガヴァッド・ギーター』の成立年代は紀元前200~紀元200年頃とも言われます。

あれ?おかしくない?文献ごとに時代がバラバラなんだけど。

 

しかし、他の哲学との関係を考えると・・・

ヨーガ哲学はカピラが打ち立てたサーンキャ哲学をベースとしています。ヨーガ哲学はサーンキャ哲学の影響を受けていると認められています。サーンキャ哲学の発祥が紀元前350~250年頃とされています。よって、ヨーガスートラの発祥は紀元前250年以降でなければおかしいのです。

また、スートラ4章は仏教の影響を受けているとの指摘もあります。ブッダが生存した時期である紀元前500年よりも後に、ヨーガスートラは完成したということになります。結論として、紀元前4000年にパタンジャリがヨーガスートラを編纂してという説は否定されます。

 

結局パタンジャリはどの時代に生きていたのか

第二・第三のパタンジャリが紀元300年以降にテキストを書き、名前を受け継いだ弟子が紀元540年頃に4章を書き上げて完成といったところでしょうか。

次点で、文法研究者パタンジャリが残した2章~3章の一部が600年後に発見され、名を借りた後世のヨギが1章や4章などを書き足した。

よってパタンジャリは複数人存在し、ヨーガスートラのパタンジャリは紀元300~500年頃の人物たちを示す言葉だと結論づけます。

長生きしている仙人って説もロマンがあって好きだけどね

 

参考文献

いまに生きるインドの叡智

現代人のためのヨーガ・スートラ

やさしく学ぶYOGA哲学バガヴァッドギーター

インテグラル・ヨーガ

ハタヨガの真髄

 

 

パタンジャリ豆知識

その他、パタンジャリという人物にまつわる神話や俗説などをご紹介。

 

パタンジャリの名前の由来って? 

パタンジャリの名前の由来はシンプル。人々が天に向かって救世主を送るように祈りを捧げました。両手を「ぱた」と合掌させて。その「ぱた」という音と合掌を意味するアンジャリムドラを合わせて「パタンジャリ」と名付けられたという節。

 

パタンジャリってなんで蛇頭なの?メドューサ?

神話におけるパタンジャリの話を紹介します。

シヴァ神は妻にヨーガの秘術を教えるためにジャングルに行きました。ヨーガは伝統的にマンツーマンで伝えるものだからです。話し終えると物音がします。シヴァは、やぶの中にいたアナンタという千の頭を持つ蛇を見つけました。盗み聞きした罰としてアナンタに人間のところへ行って知識を伝えるように告げました。

アナンタは人間の村に行きましたが、千の頭をもつ蛇なんて化物ですから、「うわ、バケモンだ」と怖がられて石を投げつけられます。かわいそうなアナンタ。

シヴァは「そりゃおめえ、そんな姿じゃなあ・・・」と指摘しました。アナンタは姿を人間っぽく変え、名前を「パタンジャリ」にしたそうです。

伝統的にパタンジャリは半分が蛇、半分が人間のメドューサのような姿で描かれるのはこのためです。

ちなみにヨガのアーサナにもアナンタのポーズがあります。
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理想的なヨギだったアナンタ

アナンタの仕事の一つにヴィシュヌ神のベッドになることがありました。ヴィシュヌはものすごく重く、ベッドは頑丈でなければなりません。同時に神のベッドは柔らかくなければなりません。人っていうか蛇をベッドにするってなかなかすごいけど・・・

柔らかく、頑丈なとぐろを持ったアナンタにはまさに適任でした。これがまさにヨーガスートラ2章46節の「アーサナは安定していて、かつ心地よいものでなければならない」という言葉を体現しています。

 

千の頭をもつ無限の蛇であり、ヨーガの達人

パタンジャリは不死の蛇、または好きな時に人間界に姿を現すことのできる達人(シッダ)だとも言われています。蛇から人間に姿を変えられるのなら、好きな時代と場所に顕現して教えを授けに来るというのもありえそうな話です。

 

参考文献・関連記事

ヴィヤーサは『ヨーガ・バーシャ』というスートラの注釈書を書いたことでヨーガ哲学を助けました。現代の翻訳はほぼ全てヴィヤーサの解説を参考にしています。時間があれば、ヴィヤーサに関することを調べてみようと思う。

パタンジャリに関して調べるうちに、ヨガの歴史が思いのほか面白いものだと再確認された。ヨガの練習に直接役に立つことは少ないが、伝統への敬意が沸き起こり、ヨガ講師として伝え続けていこうと思えた。

 

ヨーガ哲学が発祥した時代に関する情報を詳しく調べた記事がこちら

ヨガ5000年歴史の全貌を明らかにしてみた。古代ヨガから現代ヨガまでを10分で振り返る【中世ヨーガ発祥編】 - ITUYOGA

ヨーガスートラの哲学をかいつまんで現代語訳した記事がこちら

ヨーガスートラをかいつまんで現代語訳!ヨガ哲学を噛み砕いて解説 - ITUYOGA

興味があれば、以下の文献を読んでみるともっと詳しく理解ができる。