ヨーガがどのように発祥してまとまってきたのか。それが古代~古典のヨーガでした。
それからもう少し後。ヨーガ・スートラなどの有名なヨーガ経典が編集される頃の話です。
ちょうどブッダやソクラテス、孔子などの思想家が登場する時期でもあります。
今から2500年ほど前、世界に現れた偉大な思想家たち。ヴィヤーサやパタンジャリによって体系的にまとめられたヨーガ。
そしてヨーガの他にも生まれたインドの哲学。どれも兄弟といえる関係性です。
当時のヨーガや哲学思想はどんなものなのか、詳しく見ていきましょう。
※ここでは便宜的にバガヴァッド・ギーター発祥~ヨーガ・スートラ発祥。正統派六派哲学発祥の時代を中世と定義し、扱っていきます。
代表的なヨーガのテキスト
ここでは、聖者ヴィヤーサがまとめたバガヴァッド・ギーターと、聖者パタンジャリがまとめたヨーガ・スートラについて説明します。
まずは先に生まれたギーターから見ていきましょう。
バガヴァッド・ギーター
ギーターとは、『マハーバーラタ』という長大な物語の一部を指します。マハーバーラタは非常に長く、現代の小説などとは比べものにならないほどのものです。
そのマハーバーラタの思想の中で最も大切な部分、すなわちエッセンスとなる部分がギーターです。
ギーターは学術書というより、哲学的な小説です。小説のなかにこめられた哲学的なメッセージを読み取る必要があります。
内容は神さまであるクリシュナが、戦士であるアルジュナに教えを与え、王族の戦争をどう乗り切ろうか...みたいな物語となってます。
実は日本でアニメ化されていて、『地球少女アルジュナ』というまさにギーターの思想を汲んだ内容です。
ギーターは現代の小説に比べて取っつきにくいので、こういった入口から学ぶのもいいかもしれません。
解説書もふんだんに出ていますので、参考に。

EMOTION the Best 地球少女アルジュナ Director's Edition DVD-BOX
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2010/04/23
- メディア: DVD
- 購入: 2人 クリック: 25回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
 やさしく学ぶYOGA哲学- バガヴァッドギーター [改訂版](YOGA BOOKS)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41YbSxKaZ8L._SL160_.jpg)
やさしく学ぶYOGA哲学- バガヴァッドギーター [改訂版](YOGA BOOKS)
- 作者: 向井田みお,熊谷惠雲,久保玲子,Under The Light Yoga School (アンダー・ザ・ライトヨガスクール)
- 出版社/メーカー: Under The Light Yoga School (アンダー・ザ・ライト ヨガスクール)
- 発売日: 2009/10/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 7回
- この商品を含むブログを見る
僕なりに超訳したギーター哲学の記事があるので、内容に関しては省かせていただきます!
ヨーガ・スートラ
ヨーガスートラは極端に短い文が200ほど書かれた、ラージャヨーガの経典です。
それは俳句や短歌を思わせる、数個の単語からなる章句です。
イメージするなら、英熟語が書かれた単語帳のようなものです。
日本で見るスートラの解説書は、注釈が加えられているおかげで書籍としての形で出版されてます。
もし、そのままの文章量では、受験生向け単語帳か小冊子レベルになりそうな簡潔さです。
思想としてはカピラのサーンキャ哲学をベースとしてます。サーンキャは「数」を意味する言葉で、世界のあらゆることは25の概念で説明できるというもの。
ヨーガ哲学はサーンキャに、ちょっとだけ思想を加えただけの違いです。

- 作者: グレゴール・メーレ,伊藤雅之,加野敬子
- 出版社/メーカー: 産調出版
- 発売日: 2009/06/20
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 15回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
著者・編纂者:パタンジャリ
パタンジャリは歴史上、3つの大仕事をしています。
これらの仕事が成された時代には、とても大きな時期のズレがあります。
もしまったくの同一人物であれば、パタンジャリが数100歳の年齢ということになってしまいます。
別人と考えた方がいいかもしれません。ですが、僕個人の考えではパタンジャリとは「サンタクロース」のような存在なんじゃないかと思ってます。
ヨーガ・シャーストラ
ヨーガ・スートラの注釈書。それがヴィヤーサによる『バーシャ』という注釈書。スートラと合わせて『ヨーガシャーストラ』と呼びます。
スートラがあまりにも短い文章なので、理解するにはかなりの苦労がいります。
というか、ほとんど不可能に近いです。
そのために、詳細な解説をつけ加えるテキストが作られました。
現代ではスートラの翻訳をするうえで、セットとして扱われます。
さらに、この注釈書をさらに注釈するテキストも存在するくらいです。
ヴァーチャスバティミシュラの『ヨーガ・タットヴァ・ヴァイシャーラディー』という復註書がよく使用されます。
このように、スートラは何段階ものステップで理解をする必要があります。
- スートラではシンプルな単語の羅列
- バーシャでどんな修行法があるかがわかる
- ヴァイシャラーディで具体的な形がわかる
このように、3冊をセットに研究することでヨーガについて明確になっていきます。
僕なりに現代語訳(ほとんど超訳)してみた記事がありますので参考程度にどうぞ!
古典的ヨーガ
ハタヨガの他にも、様々なヨーガがあります。
どのヨーガも行うことはまったく違いますが、その本質は同じです。
それゆえ、行う人の気性、性質、年齢などを考慮して最適なヨーガを選ぶのがいいですね。
ジニャーナ・ヨーガ
叡智をもって、無知の闇を取り払うヨーガです。
具体的には、「私は誰か」というシンプルな問いを繰り返す修行です。
シンプルで直接的な方法すぎて、理解することが自体が困難です。
カルマ・ヨーガ
見返りを求めずに奉仕することを修行とするヨーガです。
「こうしたんだから、ああしてくれるよね?」といった見返りを求めず(思うこともせず)に行為をします。
ギブ・アンド・テイクという言葉がありますが、カルマヨーガでは「ギブ・もっかいギブ・ギブしたことを忘れる」みたいな感じです。
バクティ・ヨーガ
信愛のヨーガと呼ばれます。
祈り、マントラなどを捧げることを目的としています。
日本では「バクティ・フローヨガ」というヨガが東京を中心に広まっています。
ラージャ・ヨーガ
瞑想を中心とした出家者向けのヨーガです。
パタンジャリの解いたヨーガとは、ラージャヨーガのことです。
アーサナは瞑想を助ける実践の一部分とされています。
バガヴァッド・ギーターとヨーガ・スートラの説くヨーガの違い
ギーターではカルマ・バクティ・ジニャーナの3つのヨーガがメインに説かれています。
対してスートラでは古典的なラージャヨーガを解説しています。
これらをギーター派とスートラ派の2グループに分けることができます。
ギーター派
普通に働き、自宅にいながらもヨガの修行ができる。在家のヨガ。
スートラ派
静かな山奥などに篭もり、俗世を離れて行うヨガの修行。出家のヨガ。
正統六派哲学の発祥
ヨーガ哲学以外にも五つの哲学が発祥しました。なにをもって正統かを決めるのかは、バラモンというインドの階級やヴェーダの権威を認めるかどうかです。
認めていない仏教やジャイナ教などは非正統派ということになります。
他の共通点は業(カルマ)や輪廻の概念を受け継いでいます。
サーンキャ
数の哲学。世界の概念は25の理論で説明可能というもの。
開祖:カピラ(紀元前350~250頃)
教典:サーンキャ・カーリカー
ヨーガ
ご存知、ヨーガの哲学。ラージャヨーガの哲学です。
世界はプルシャとプラクリティ(観るものと観られるもの)に分けられる、いわゆる二元論となってます。
二元論とは、「男性と女性」「吸う吐く」「太陽と月」のような二つの性質で物事を説明しようとする考え方のことです。
西洋哲学に慣れてる我々はつい「精神と身体」という二元論だと思ってしまいがちですが、これは勘違いです。
観るものは精神ではありません。私達が知る心も、観られるもののほうなんです!
「じゃ、何が観てるの?」と言われそうですが、それが神・世界・悟りのような存在です。
これらは変わることがなく、どんなものの影響も受けません。
例えるなら、映画の映像とスクリーンのような関係です。
どんなに映像の中でゴジラが暴れても、スクリーンはなんともありません。
ヨーガを実践すると、変わることの無い「観るもの」が私達の根底にあると気がつくとされます。
開祖:パタンジャリ(編纂)
教典:ヨーガ・スートラ
ヴェーダーンタ
開祖:バーダラーヤナ
教典:ブラフマ・スートラ(ヴェーダーンタ・スートラ)
ミーマーンサー
開祖:ジャイミニ
教典:ミーマーンサー・スートラ
ヴァイシェーシカ
開祖:カナーダ
教典:ヴァイシェーシカ・スートラ
ニヤーヤ
開祖:ガウタマ
教典:ニヤーヤ・スートラ
他の時代について
今回は紀元前後のお話でした。他の時代、ハタヨガの発祥や古代のヨガのことについてはこれらを参考に!