健康的かつ安全な手法VS短期決戦で力ずくな手法
180度開脚は簡単だ。こんなのはただの技術だ。車を運転したり、パソコンを使うのと同じだ。誰にでもできる。正しい知識と、ちょっとの練習時間があれば問題ない。性別も、年齢も、体の硬さも関係ない。
僕は過去に、一年ほどかけて股関節を180度開けるようになった。最終的には200度まで開けた。前後開脚も180度で開ける。
その上で、プロのヨガ講師としての経験、スポーツと健康についても勉強を続けている。股関節を柔らかくする方法について、有益な情報をまとめよう。
ストレッチが正しく行われれば、健康になるのは当たり前だ。ただし、健全な可動域と適切な時間行うことを条件に置く。もともと西洋でストレッチが開発された過程をかんがえれば、体の柔軟性を高めてスポーツのパフォーマンスを高めたり、健康維持増進のために医学者たちが研究していたものだ。ストレッチの目的は体を壊すためではない。
追記:ストレッチにおける3つの基本理念
1,痛みより心地いい方向へ伸ばすこと
誤「痛みなくして成長はない」正「心地いい方へ持ってけば自然と伸びる」
2,呼吸をゆっくりととること
深くてゆっくりとした呼吸は体を暖め、副交感神経を優位にして筋肉の緊張を緩める
3,暖かい環境で、体を暖めながらすること
環境を整えることも練習の一部
以上を頭の片隅に置きながら読んで欲しい。
スポーツや生活のパフォーマンスを上げるのは
イチローの股関節は柔軟だが、ガムシャラなストレッチは一切しない。むしろ関節や筋肉を守るような丁寧な鍛え方をしている。だから40歳になっても現役でいられる。
たいがいのハードなスポーツでは選手が30歳くらいで引退してしまう。体がついていかなくなることも原因だが、故障によるものも大きい。
故障は無茶な動作を体に強いることで起きる。正しいストレッチを学べば、生涯現役でいることだって可能だ。
ストレッチで痛みよりも心地よさを取るべき理由
ストレッチに痛みがあってはならない。なぜなら、痛みは「そっちは間違っている、行きすぎだ」というアラートだからだ。身体はあなたの考えている以上に賢くできている。身体は知性そのものだ。
痛みを覚えると、筋肉はあっという間に緊張する。どんなに息を吐いてこらえてみても、痛みはなくならない。その痛みを感じるラインは「エッジ(境界線)」と呼ばれる。エッジを超えると神経は縮まるように筋肉へ信号を発信する。結果、筋肉を強引にひっぱって、ダメージを負わせてしまう。
逆に心地いいと、身体は自然と伸びようとする反応が起きる。結果、エッジを超えない心地いい範囲でも身体はやわらかくなる。しかも健康的にだ!
NO PAIN NO GAINは石器時代な思想
ノーペインノーゲイン(痛みなくして成長は無し)という言葉があるが、あれは嘘だ。昭和時代の古い知識だ。残念なことに、筋肉は痛みを覚えるごとに小さく固くなろう性質をもつ。
体の仕組みを勉強しよう
体の仕組みを理論的に説明しよう。
痛みを感じる受容器、筋紡錘について
筋肉には筋紡錘(きんぼうすい)という「筋肉が伸び過ぎると痛みの信号を出す神経」がある。この神経は筋肉が伸びすぎて損傷することを防ぐ働きをもつ。痛みは体を守るためのものだ。
筋紡錘があるおかげで、ケガをせずにいられる。もし筋紡錘のアラームを無視すれば、筋肉は伸びすぎて損傷し、力を発揮できなくなる。これをオーバーストレッチという。
結合組織や関節の安定性
腱や靭帯というものが筋肉や骨をつないでいる。もし、この腱や靭帯が切れたり、ゆるみ過ぎたらどうなるだろうか?
ぼくがヨガの先生から聞いた話をしよう。
あるヨガインストラクターは、毎朝何時間も時間をかけて股関節を開くストレッチをしていたそうだよ。開脚し続けるんだ。それであるとき、「股関節が完全にひらいた!」という感覚を得ることができたそうだ。それで立ち上がってみたら、ポクッ!!そう、股関節が外れ太ももが宙ぶらりんになってしまったんだ。それによって伸びてしまった靭帯や腱が緩み、もう元のように開脚はできなくなってしまった。
いやあああああああ!!
怖い話だ。関節はけっして、どんなことにも耐えられるものではない。過剰にストレッチすれば、つなぎ止める組織が破壊されてしまう。体を本格的に柔軟にしたいなら専門書を参考に勉強したほうがいい。自己流は悲惨な目にあう。
股関節を柔らかくする方法
適切な方法でストレッチをすれば身体は柔軟になる。スポーツで怪我をする可能性もグッと低くなる。
ご紹介するストレッチの考案者はid portal(イド・ポータル)というボディワークの専門家だ。多くの生徒を体操選手なみの身体能力を引き出してきた。しかも、めちゃくちゃ安全に。
こちらがYouTubeのリンクです。「Ido's Squat Routine 2.0 - YouTube」
普通の本に書かれているストレッチに加えて、このメニューを取り入れてほしい。体が硬い状態でも無理せず股関節の緊張をとることできる。
開脚に役立つ10のヒント
7年に及ぶ筋肉の研究から得た知識、200度開脚まで到達した経験から、10のヒントをまとめておく。
静的ストレッチ
よく知られたストレッチは、この静的ストレッチのことだ。体を動かさないで筋肉を伸ばすもの。ジワジワと時間をかけて目的の筋肉を伸ばす。
ポイントはエッジを超えない(痛くない)範囲で行うこと。痛イタ気持いいの寸前で止めよう。あとは呼吸をすることで、自然と筋肉は伸びるようにできているから安心して欲しい。
短期間で開脚しようと焦らない、慌てない、伸ばさないことだ。
キープ時間は、ゆっくりと5回呼吸をする長さがちょうどいい。(ひと呼吸を10~15秒とする)長すぎても効果が薄いので、さっさと次のストレッチに移ったほうが効率がいい。
動的ストレッチ、バリスティックストレッチ
静的ストレッチに対して、体をアクティブに動かすのが動的ストレッチ(バリスティックストレッチ)という。サッカー選手などは、足を前後に大きく降る準備運動をするが、動的ストレッチのいい例だ。
180度開脚を目指すなら、足を前後や左右に振る動きを取り入れてみよう。
- 動的ストレッチ:筋肉の出力を上げる。運動前に行うのが理想
- 静的ストレッチ:筋肉の出力をさげるので、運動のあとが理想
PNFストレッチ、ファシリテートストレッチ
腱を守る受容器、ゴルジ腱器官というものがある。筋肉を守るのは筋紡錘だが、腱を守るのはゴルジ腱器官だ。こいつの特性を応用したストレッチがトレーナーの中で流行っている。トレーナーのもとでなら、PNFストレッチを行う場合の補助者になってもらえる。安全かつ効果的にストレッチを深められる。
※必ず専門家のもとで習うこと。自己流はケガの素なので、自己責任で行うこと。
たとえばこのストレッチなら、20%の力で手を足で押し返す。だいたい10秒。これだけだ。こうすることでゴルジ腱器官の特性が活かされて可動域が広がり、さらにストレッチができる。
- 20%だけの力で押し返す
- 一つのストレッチに1回のみ
- 再度やるには48時間置く
呼吸について
呼吸は必ず行うこと。もうこれは常識であり、呼吸が止まるようなストレッチはしないでほしい。呼吸を止めると酸欠によって筋肉は固まる。だけど呼吸をすることで酸素が行き渡る。血行もよくなって体温が上がり、柔軟性も高まりやすい。
また、呼吸をすることでリラックス作用が生まれる。呼吸が乱れたら、エッジを超えた危ないストレッチをしている証拠なので、すぐにフォームを緩めよう。
体温と室温について
体が温まっているほうが筋肉は伸びやすい。風呂上りである必要はないが、冷え切っていると伸びにくいので、屈伸などをしてみたらどうだろう。
ストレッチをするときは部屋の温度を上げておくといい。冬場は毛布があるといい。寒いところにいるとストレッチをする気力もわかない。
環境の整え方
もしできれば、ヨガマットなどの、床との接地面がソフトなものを用意しよう。いつでもヨガやストレッチができるように365日いつでもヨガマットのスペースがある。布団の上でもいいが、本格的に体をケアしたい意識の高いあなたはヨガマットを購入するといい。多少高くても、抜群の使い心地を発揮する。
ヨガデザインラボの商品はインテリア的にも優れているのでおすすめしたい。

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相反抑制、生理学的な陰陽
筋肉には相反抑制(そうはんよくせい)というおもしろい特性がある。筋肉が力を発揮するとき、反対の筋肉が緩むというものだ。
例えば、膝を伸ばそうとすると、太ともの前側の筋肉は収縮し、裏側は緩む。この原理を応用してストレッチ効果を高めることができるが、詳細は後で紹介する本に書かれている。
脊髄反射弓を使う
筋紡錘についてはじめの方でお話したが、筋紡錘の特性を逆手にとってストレッチをすれば、筋肉は思ってるよりもう少し伸びてくれる。脊髄反射弓の原理だ。
- エッジのギリギリまで倒す
- わずかに戻して10秒待つ
- 筋紡錘が緩むので、もう一度倒す
こんな感じで行えば筋紡錘が緩んで最初よりも少し倒せるというもの。
筋膜リリース
筋肉の周りには薄い膜が覆っている。卵の薄皮みたいなものだ。この筋膜は疲労とともに固まってしまい、柔軟性をさげたり、体をカチカチにする。この筋膜をリリース(開放)することで柔軟性をとりもどし、体を軽くしてくれる。
ストレッチポールは硬くなった筋膜をほぐすのに一役買ってくれる。ヨガマットと揃えておくと便利だ。背中を乗せたり、太ももの裏に置いてコロコロするだけで、めちゃくちゃ気持ちいい。
追記:前後開脚と左右開脚
前後と左右の開脚は使う筋肉が大幅に違う。でも、先ほど紹介した理論は全てに共通することだ。ストレッチの基本的な理論だけ守ってくれれば問題ない。数ヶ月もあれば開脚ができるようになる。
まとめ
1,痛みより心地いい方向へ伸ばすこと
2,呼吸をゆっくりととること
3,暖かい環境で、体を暖めながらすること
以上を守って、安全で効果的なストレッチをしてください。
おすすめの書籍
本気でストレッチを身につけたいなら、専門書を読みましょう。書店で平積みされている一般ピーポー向けのわかりやすい本も便利ですが、本当にストレッチを理論から学びたい方はこちらの本を本気でおすすめします。
紹介した10のヒントに関することが詳しく書かれています。
間違った方法でストレッチをして3ヶ月無駄にするくらいなら、数千円出して効率よく生涯にわたって役立つ知識をつけましょう。ヨガの専門もありますが、ストレッチ理論も詳しく解説されています。
こちらの記事もどうでしょうか。
健康に関して、こんな記事も書いています。キレキレの体を作る食事、肩こりに関することなど。
この記事を書いた人
柏原ゆうた(かしわばらゆうた)
ヨガ講師、呼吸法のトレーナー、ライター。大学ではスポーツと健康を専攻。トレーナーとしての理論やストレッチいついて学ぶ。