陰ヨガ(Yin Yoga)の効果、ポーズ名、特徴、歴史、おすすめの本。指導者向けのシークエンスの組み方とかもまとめました。すぐに使える陰ヨガのシークエンスも3つ入れました。
レッスン経験は200本程度あるんですが、ブログで扱ったことが一度もありませんでした。知識が錆びつかないように、備忘録も兼ねて。
- 陰ヨガとは
- 陰ヨガの特徴
- 陰ヨガの歴史と人物
- 陰ヨガのポイント
- こんな人に向いている
- 陰ヨガがもたらす7つの効果
- 陰ヨガのポーズ
- 陰ヨガの練習4カ条
- 陰ヨガと陽ヨガの違い
- Q&A
- 陰ヨガ講師の7つのガイドライン
- シークエンスの組み方
- 陰ヨガシークエンスの一例
- 陰ヨガの本・DVD
陰ヨガとは
陰ヨガとは、それぞれのポーズを3から5分ホールドし、体をリラックスさせることに重きを置いた、非常にゆっくりとしたヨガ。
陰ヨガは関節がターゲット。骨盤、背骨、肩甲骨まわりの組織にアプローチする。膝や足首にも働きかけるポーズもある。力を抜いて、自分の体重を使って、関節周りにある奥深くの結合組織を刺激する。可動域を広げ、体だけでなく精神的にもリラックスさせる。
陰ヨガの特徴
- 力を抜き、筋肉をリラックスさせて、関節などの結合組織に働きかける
- 3から5分と、ホールド時間が長い
陽ヨガは筋肉に力を入れてポーズをホールドする。ホールド時間は1分程度。陰ヨガは力を抜くことで、まったく違った効果を狙うもの。アキレス腱などの腱や、靭帯のような結合組織に働きかける。筋肉と違って、長時間のホールドをしないと効果が現れないため、3分以上のホールドをする。
陰ヨガの歴史と人物
1980年代にアメリカでポール・グリレィ氏が指導を始める。日本にもティーチャートレーニングに来日している。
陰ヨガ創始者:ポーリー・ジンク(Paulie Zink)
道教のヨガ=タオイズムのヨガに、マーシャルアーツ(武術)の要素を加えた。香港でカンフーを学び、気功や陰ヨガの練習を積む。ポーリー・ジンク公式サイト
陰ヨガ第一人者:ポール・グリレィ(Paul Grilley)
陰ヨガの第一人者。1980年から陰ヨガの指導をスタート。瞑想やチャクラに関する哲学は本山博に影響を受けている。ポール・グリレィ公式サイト
有名な指導者:サラ・パワーズ(Sarah Powers)
アシュタンガヨガにも精通し、陽ヨガと陰ヨガの両方に詳しい。陰ヨガの専門書『インサイトヨガ』の著者。
日本の博士:本山 博(もとやまひろし)
鍼治療、経絡などの知識に長けている。ヨギーでもあり、チャクラの研究もしている。彼の哲学がポールに影響を与えている。
陰ヨガのポイント
座位、うつぶせ、仰向けのポーズが中心。股関節、背骨、ときどき肩甲骨周辺にアプローチする。陽ヨガでは筋肉の強さを作り、陰ヨガで結合組織や関節の柔軟性を高めます。体をジッと止め続けるため、リラックス効果が高まり、精神的な落ち着きが得られます。アクティブな陽ヨガの練習を補う、影の役割を担っています。
「陽の性質をもった組織は陽の方法で、陰の性質をもった組織は陰の方法で練習しましょう」
ポール・グリレィ
こんな人に向いている
動きが少なく、穏やかであるため、年齢や性別を気にせず誰にでも楽しめる。プロップ(補助具)を使ってポーズのバリエーションが作れるため、体の特性に合わせることができる。
緊張やストレスにまみれている人、せわしなく動き続けている人、運動不足な人、体が硬くなっている人に最適です。柔軟性を体と精神の両方から取り戻し、張り詰めていたストレスを解消することができます。リラックス効果も高いのですが、元気に動くためのエネルギーを取り戻せるのが利点です。
陰ヨガがもたらす7つの効果
陰ヨガの主な効果を7つ抜き出しました。
より深い柔軟性のアップ
たんなるストレッチと違い、筋肉だけでなく靭帯や腱などの結合組織も柔軟になります。陽ヨガでは高めにくい組織の柔軟性が高まります。筋肉は伸縮性が高く、ストレッチをすればすぐに反応します。しかし、靭帯や腱などの結合組織は時間をかけないと反応しません。
体のコリ解消
それぞれのポーズのホールドが長いため、じっくりと体を刺激できる。腰痛や肩こりが緩和される。肩甲骨まわりにアプローチするポーズを正しい時間でやってみると、随分と肩が楽になりました。
集中力アップ
ポーズを長時間に渡ってホールドし、深い呼吸を繰り返すことで高いリラックス効果が得られます。リラックスすることで、散漫になりがちな意識が集中します。
シェイプアップ
普段はなかなか刺激できない結合組織に働きかけるため、深部の血流もよくなります。それにともなって、代謝もよくなります。シェイプアップ、デトックス効果が高まります。
ストレスの解消
深い呼吸と、長時間のホールドによって、リラックス効果が見込めます。練習しているときの感覚から言えば、体の形が特殊な瞑想といった感じです。ポーズの形で体にリラックス効果を生み、深い呼吸によって瞑想と同じ脳へのリラックス効果が現れます。
背骨や骨盤のゆがみの解消
関節に刺激を加え、背骨のゆがみ、骨盤周りのゆがみを解消します。極端な左右差が目に見えないくらい小さなものになったり、姿勢の悪さが改善されます。もちろん、一生に渡って付き合うようなレベルのゆがみもあるでしょう。しかし、そんなゆがみと「どう付き合おうか」という心構えもできていきます。
対人コミュニケーションがスムーズに
ポーズのホールド時間が長い陰ヨガでは、心を静め、呼吸や体に意識が向きます。外の出来事に向いていた意識が、自分に向くことで、自分自身について見つめ直す時間になります。結果、他人とのコミュニケーションにもポジティブな変化があります。
陰ヨガのポーズ
大きく分けて、股関節、背骨、肩甲骨
基本的なポーズはすべて下半身。肩甲骨などは応用のポーズとして紹介されます。ベーシックなポーズ名を紹介します。形や効果は後で紹介する本を購入し、参考にしてください。
※写真などは、カメラとカメラマンが手に入ったら追加します!。゚(゚´Д`゚)゚
股関節のポーズ
- ドラゴン/ゲッコー
- スワン
- バタフライ
- ドラゴンフライ
- クレードル
- キャタピラー
- チャイルド
- シューレース
- スクエア
- ハッピーベイビー
- フロッグ
- サドル
- セイザ
- アイ・オブ・ザ・ニードル
背骨のポーズ
- キャットテイル
- ハンモック
- インファント
- スフィンクス(ピラミッド)
- シール
- スネイル
- ツイステッド・ルーツ
- マングース・ツイスト
肩甲骨のポーズ
- クオータードッグ
- パピーレスト
- ファンキーチキン
- ハーフナマステ・ライイングダウン
- リクライニング・ブッダ
- 逮捕のポーズ
陰ヨガの練習4カ条
1,適切な位置を探す
あらゆるヨガにおいて、ポーズに完成形はない。陰ヨガも例外ではない。体が嫌がっている場合と感じれば、遠慮せずポーズを調節する。
2,静かにすると覚悟を決める
ポーズを強くしようとしたり、逃げるように緩めたり、急激な変更はしない。可動域の境界線(エッジ)で静かにホールドする。
3,一定時間ホールドする
陰ヨガのホールド時間は3から5分と長い。長時間のホールドに慣れていない人には、落ち着きを作り出す練習になる。
4,ポーズを終わるときは慎重に
体の奥深くに働きかけるため、ポーズから抜け出すときは慎重に。
陰ヨガと陽ヨガの違い
陰ヨガと陽ヨガを比較したときの、互いの特徴。
陽ヨガの特徴
1,能動的
重力に抗ったり、自分の力でポーズをとります
2,繰り返し行う
一つのポーズを、呼吸とともに複数回行います
3,筋肉に働きかける
筋肉は体の組織で言えば陽。アウター、インナー両面の筋肉に働きかけます
陰ヨガの特徴
1,受動的
リラックスして、最低限度の筋力と重力に任せてポーズをとる
2,長時間ホールドする
動きがほとんどない。ホールド時間は3分以上と、陽ヨガよりもずっと長い
3,靭帯や腱に働きかける
結合組織は体の組織では陰に当たる。
Q&A
よくある質問。
陰ヨガは安全ですか?
激しくアクティブな陽ヨガに比べれば、はるかに安全です。
練習しているとしびれるような感覚があるのはなぜ?
長時間のホールドで、血液の流れを一時的に圧迫するため。圧迫した分、血液の流れはよくなります。
呼吸はどうしたらいいですか?
ウジャイ呼吸は使いません。ゆっくりとした自然な呼吸をどうぞ。
ポーズが取れなかった場合、どうしたらいいですか?
よりい簡略化した形にしましょう。プロップ(補助具)があれば使ってみましょう。
陰ヨガ講師の7つのガイドライン
- クラスのテーマとシークエンスを準備する
- 生徒に陰ヨガの経験があるかどうか確認する
- 完成形がないこと、見た目ではないと伝える
- クラスが始まる前に気分を落ち着かせる時間をとる(気功など)
- 初心者には、陰ヨガの2つの特徴と伝える(①力を抜いて②長時間ホールド)
- 生徒が痛みを感じていたら、軽減法を提示できるようにする
- クラス中は話しすぎない
シークエンスの組み方
あまり難しくないです。こちらの記事も参考にしてださい。
陰ヨガシークエンスの流れ
- 気功(太極拳に見られる動き)
- 左右対称な優しい前屈
- テーマに沿ったポーズ7つ
- 左右対称な優しい前屈
- ペンタクル(いわゆるシャバーサナ、屍のポーズ)
- プラーナヤーマ(呼吸法)
- メディテーション(瞑想)
60分のクラスの場合、ポーズは10個程度。
シークエンス作りで気をつけること
1,チャレンジングなポーズは1つか2つで十分
形が難しい、応用的なポーズ。あるいは、時間を長めにとる(タイムチャレンジ)。チャレンジポーズ同士は離す。
2,チャレンジポーズの後は休ませるポーズを入れる
1~2分で十分。きつめの後屈の後なら、優しいねじりのポーズ。陽ヨガのダウンドッグなどもOK。チャイルドポーズなら何回やってもOK。
3,ポーズからポーズの移行がしやすい構成を心がける
仰向けから突然、うつぶせにならないようにするということ。似たポーズにつなぐことで、最小限の動きで移行できる。
4,クラスの始まりと、屍のポーズ前は左右対称の優しい前屈を
後屈で始めない。股関節のポーズから。そして、後屈で終わらない。左右対称のポーズでバランスをとる。
5,テーマは明確にする
背骨、股関節、上半身、あるいはミックス。テーマを決めて、「なぜ、このポーズを入れるのか」を明確にする。
陰ヨガシークエンスの一例
特に注釈がなければホールド時間は3分です。左右非対称のポーズは、半分ずつ。10種類のポーズの前後は、前のトピック「陰ヨガシークエンスの流れ」のようにしてください。
ミックスシークエンス
- バタフライ
- ドラゴン1(2分)→ダウンドッグ(2分)
- チャイルド
- シューレース(5分)
- ツイステッド・ルーツ
- スワン(5分)
- スフィンクスまたはシール
- チャイルド
- ハッピーベイビー
- 屍のポーズ(5分)
股関節シークエンス
- バタフライ
- ドラゴン2
- チャイルド
- フロッグ→チャイルド(2分)
- ドラゴンフライ(5分)
- 仰向けのバタフライ
- ツイステッド・ルーツ
- サドル
- クレードル
- 屍のポーズ(5分)
背骨シークエンス
- セイザ
- 半分のバタフライ→マングース・ツイスト(1分)
- キャタピラー
- スネイル(首に問題があれば避ける)
- クレードル
- ツイステッド・ルーツ
- ピラミッド/シール
- チャイルド(1分)
- サドル→ハッピーベイビー(1分)
- 屍のポーズ(5分)
陰ヨガの本・DVD
陰ヨガの新しい教科書は、陰ヨガポーズがどのように経絡に働きかけるのかが詳しくわかります。アシュタンガヨガに精通しているサラ・パワーズならではの陽ヨガのポーズの解説も、陰ヨガの学びに役立ちます。
こんな記事もありますが、いかがでしょう。陰ヨガ+マインドフルネスは相性いいと思うんですよね。陰ヨガのポーズは体の感覚に意識を向けるので、マインドフルネス状態そのものですよね。また、瞑想について勉強すると、陰ヨガがプラクティスの役に立つと理解できます。
陰ヨガの指導者の資格なら数日で取得可能です。しかし、経絡や体の組織について学びを深めるには一生かかるので、上で紹介した本などに加えて、専門的な経絡の勉強もしたほうがいいかもしれません。